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心理コラム

摂食障害とその治療

2024.02.01

摂食障害の治療において、まずは心身がどのような状態であるかを知ることが大切です。何歳ごろから症状が現れたのか、拒食・過食のみなのか、交互に繰り返されているのか、体重の変化、現在の健康状態などを明らかにします。それにより、他の精神症状が併存していないか、栄養失調などの身体的な症状が現れていないか、入院の必要性などを鑑別します。また、本人が今どのような思いを抱えているのか、今後どうしていきたいかなど、心の様子を知ることも治療の第一歩です。

◆心理教育的治療

 摂食障害の人は、実際は倒れそうなほどやせてしまっているのに「元気だから大丈夫」と認識していたり、むちゃ食いと嘔吐を繰り返すという異常な行動があるにもかかわらず「体重は平均だから大丈夫」と認識していたり、本人に病識がないことがあります。心理教育的治療では、病気の認識を持ってもらうために、摂食障害という病気について学びます。

◆食事・栄養指導

 病院やクリニックによっては栄養士による食事・栄養指導を受けられます。本人が抱いている体重の増加に対する恐怖心や特定の食べ物への嫌悪感などを考慮しつつ、食べられるものの種類や量を増やしていきます。また、食事を提供する家族への指導も大切です。食事を提供する人、される人がともに理解しあい、信頼しあうことで、安心して食事を摂れる場ができるのです。

◆認知行動療法

 認知行動療法では、正しい食生活について知る心理教育を行いながら、その背景にある精神的なメカニズムを紐解いていきます。過食や拒食という極端な行動が繰り返される原因は、それをすることで何らかの報酬が得られるという誤った学習によるものです。しかし、心身共に大きな負荷がかかるにも関わらずその行動を繰り返してしまう背景には、個人の生育歴、トラウマ的な経験、家族との関係性、社会的環境など、とても個人的で複雑な状況が絡み合っていると考えられています。

たとえば、「食べる」という行為を養育者との愛情やしつけの象徴と感じる人もいるでしょう。嫌いな食べ物を「嫌い」と言えない関係性であったり、食事のマナーを厳しくしつけられたりした経験が想起されることがあります。「~しなければならない」という強迫的観念が、「やせなければいけない」「自己コントロールできない自分はだめな人間だ」という認知につながっているかもしれません。

摂食障害の人の多くは否定的な自己イメージを持っています。たとえば、太っていることで周囲に悪口をいわれたりいじめられたりした経験があると、そのイメージを払しょくするために過度なダイエットに取り組むことがあります。女性が異性から性的な対象として見られることを回避するため、成長や発育を促す「食べること」を拒否する場合もあります。その場合は「性的なアピールをしている自分が悪い」という自罰的な自己イメージを抱いているでしょう。

容姿に芸術的価値があると評価されるスポーツでも、過度なダイエットに打ち込むことがあります。やせることで得られるメリットあるため、本人は成功体験と感じていても、その根本には技術面や成績など他の側面での劣等感や焦り、不安があるのかもしれません。

摂食障害は治すことができる病です。しかしながら、特効薬があるわけではないため、すぐに症状が改善することはありません。治療が何か月、何年にもわたる場合があります。また、治療の過程で過去のトラウマや避けていた問題と向かい合わないといけなかったり、つらい思いをする時期があるかもしれません。治療は一人で行うわけではありません。家族や信頼できるサポーターとともに歩んでいくものです。まずは、どんなことでもいいので自分の言葉として表現してみましょう。「食べること」は「飲み込む」ことでもあります。言いたいことを誰にも言えず、「飲み込んで」いないでしょうか。吐き出したいときも、誰にも知られないよう密室でトイレに流してしまっていませんか?自分自身が何を飲み込んで、吐き出しているのか、思いを巡らしてみるのもいいかもしれません。

こころの保健室では、その過程を一緒に歩んでいくカウンセラーがいます。ぜひ相談してみてください。

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